新卒女雑記録

22時ちょうど 東京発

だいじだよ

 大切なものは、高校生の途中まで、自分の机に付けていた三段になってる引き出しの一番下に全部入れた。でも、いま思い出そうとしても、ちゃおフラワーコミックス、以外になにを入れてたのか、ちっとも思い出せない。記憶は、どんどんなくなっていくのだろうか。

先日、一番大切な友達が、自殺してしまった。一週間経って、もう知った時の感情はぼけて、きてしまった。どうしよう、と思った、きっと本当に死んじゃったんだな、ということだけがはっきりとわかった。しかたのない死なんだと、たぶんそういう気持ちがした。

 

彼とは、私が大学一年生の夏のすこし前くらいに知り合った。ちょうど5年前くらい。初めて会ったのは、知り合った次の日、池袋の駅、一緒にプリクラして、私の家でごはんを食べて、夜中の階段をあがって大塚の家並みを見下ろした。ハイになっていた彼はコンビニの前で知らない人にたばこをもらっていた。毎週火曜日、一緒に遊んだ。次の日の二限は決まってサボることになった。夕方から朝まで、ずっと、音楽を聴きながら、くだらないことをくだらないと言って笑った。読んだ小説の話をして、詩を読んで、絵を描いて、ハルヒのアニメを見た。私が寮に引っ越した後は、彼氏の家にほとんどいたので、遊ぶ頻度は減ったけど、家に行けばいつも、同じようにあそんだ。遊ばないときも、ツイッターでいつも話した。つらく、苦しいことがあれば連絡しあい、会えば心動いた美しいものの話をした。わたしたちは一つの魂から生まれたんだということが、もうすでに二人にはわかっていた。私たちは直感と愛とこころを信じていて、肉体と愚鈍さを強く憎んでいた。彼は自身が私より一つ年上であることをいつも悲しいと言った。

人間として、私たちはお互いが世界で一番大切で、本当のこころを丁寧に見せ合った。私には恋人がいたが、恋人とは違う、もう一人の自分として、自己愛を注いでいた。

 

昨年、彼に恋人ができた。Aちゃんとする、彼はAちゃんは自分の肉体ではなく精神を愛するとうれしげに語り、私もこころからうれしく思った。でももう、彼はしんでしまった。

 

最後に会った日、四月の終わり頃、彼はずっと泣いていた。わたしはがんばって慰めた。何度も帰らないでと泣いた。私と彼の違うところが一つだけあって、それがすべての問題だった。わたしにとって、恋人が1番であることと、人間として彼が一番であることは独立だけど、彼にとってその区別はなかったこと。悲しく私たちは、互いの恋人が死んだら一緒に好きなことをして暮らそうねと約束をして別れた。彼はもう自分のことをあきらめていて、私に幸せになってねといって、初めて手を握った。世界一悲しい気持ちで二人で泣いた。そのときも、どうしようって思った。そのあとは、もう怖くなって逃げた。彼も関西に行ってしまった。

 

昨日から今朝にかけて、とても苦しいことがあって、心臓がちぎれて、そういうときは決まって彼と電話をしていたのに、それができないことに気がついて、彼が死んだことが真実になってしまった。こころが冷たくて、怖くて、苦しい。永遠になった彼をどのように思えばいいかわからない。完全に、ひとりぼっちの気持ちです。