女子大生雑記録

ここは、ほんとの部屋

ビスコ

 

 

品川駅のホームから彼が車内へ乗り込んだ時、彼の席にはすでに人が座っていた。彼が最も苦手とする若い顔の良い女で、ヒールを履いた足がギラついている。彼も十分に若く、容姿も人並みか、それ以上のものではあったが、きちんと化粧をした女に話しかけることは怖かった。そのような臆病さを持つにも関わらず、まだ顔を見ぬ乗客のことはてんで恐れないようで、堂々と通路を挟んだ女の斜め前の席に座った。彼の豪胆はこれだけではない。もし今座った席の真の乗客が現れた時には、通路に立ち上がり彼の女の極悪非道を大衆の下に糾弾してやろうと意気込んでいるのである。新横浜駅が待ち遠しい、そんな気持ちで口元を緩めていた。

 

 

思考が飛ぶ。小売業について考え始めた。特に、品出しについて。学生の時分、コンビニでアルバイトをしていたことがあった。その時のことを思い出している。箱パッケージのお菓子などを並べる時に、商品の表が2面あるお菓子を大変重宝した。ということを誰に伝えればいいのだろうか、毎回このことを考える。もっと、表が2面ある箱物商品を増やして欲しい、という要望を誰に言えばいいのかを一生懸命考えている。今は小売業に関わっていないし、この先仕事にするつもりもないのだけれど、自分が商品陳列界の代表であるかのような、真剣さ、それ以上の真剣さでいつも悩んでいる。意味のない広告を減らしてその分そこを表面にすれば、、表を、表にして並べることができないから在庫になっている商品を山ほど見たから、きっとこれは、メーカーの利益にも繋がるはずだ、こんな簡単なことなのに、誰に教えてあげればいいんだろう。都心では特に有用な情報のはずなのに。

 

新大阪に着くまで、彼の席には誰もやってこなかった。