新卒女雑記録

22時ちょうど 東京発

その3 ルールを破った日

 

記憶の中、意図的でなく、おうちルールを破った初めては、幼稚園の修了式かなにかで半日終了の日に、友達数人とそのママたちに誘われて、うちのママ、妹も一緒にマクドナルドに行った日。当時私の家では子供が炭酸飲料を飲むことは禁止されていた。歯が溶けちゃうからという理由だったと思う。ほんとにとけるのかどうなのか未だに私はわからない。ともかくその日、私は友達Kちゃんのコップを間違えて手に取り、口に含んだ。勢いよく炭酸飲料を口に入れたことはなかったけど、何のことはなかった。おいししいものだと思った。そのまま知らん顔して2,3口飲んでやろうかしらんとしたが、のどを通った瞬間に、これは今でもそうなるけれど、眉間にしわを寄せて耐えるような表情をしてしまった。お母さんにばれた。やばいと思ったけど、穏やかに母は、ごめんねこれKちゃんのやん~間違えて飲んじゃったわ、と言ったきり。てっきりもっと怒られるものかと構えていたのに。でもこののちもしばらくはわたしはおうちルールに逆らうことを知らない子供でありつづけた。

 

 意図的に初めてルールを破ったのは、(たぶん)小学校一年生の時。うちにはおつかい、お洗濯、をしてもらえるお駄賃をせっせと貯める瓶があった。10円や50円をせっせと貯めた。なんのために貯めていたのかは不明だし、母からこれは使っていいお金ではないとかなんとか、言われていた。小学生と言えば、駄菓子屋。しかしそもそも私は5時以降の外出が禁じられており、さらに駄菓子屋がある地域への立ち入りも禁止されていた。ところがある日、立ち入り禁止地域外にも駄菓子屋があることを知った私は、もう行きたくて行きたくてたまらなくなって辛抱たまらず、こっそりと、それはもうこっそりと、それこそ音も立てないように注意して、貯金箱から選りすぐりの150円ばかりを選り出し、友達と合流。背徳感ではないが、それに近しい、やったった感、それよりも時分のお金で買い物を、母の監視下ではないところで、好きなものを、誰の断りも得ずに買うことは実行できるんだという新しい発見。大げさでなく、勝手に持ち出した150円では硬貨としての実力を発揮できるのかどうかなんて、二信八疑くらいだったから。

結局このときは楽しくなってしまって、友達にもお菓子を買ってあげて、それが友達の母から私の母に伝い、少し怒られた。これもまた、少し、怒られた程度だったのだ。余談だが、私は初めて時分で買ったお菓子を地面に落としたため、二口くらいしか食べていない。あと、その駄菓子屋さんの名前が思い出せない。

 

このときの経験から、母は、私のことを抑圧するが、実際に禁を犯してしまったあとでは、意外にもそこまで怒らないということを知った。そこから少し、私はずるい子になった。母の目を盗みルールを破りだした。中学生の時が一番つらかった。思春期の無自覚の正義感から、ルールを破ることの正当性を主張するようになり、半分くらいの行動を隠すのをやめたからだ。当時の私のひどさはというと、その頃の私を見て育った末の妹が無事ドキュンに成長したほどである。

 

最近では、奨学金打ち切り、大学留年、引っ越し、旅行、アルバイトなど、母の許可なしに人生を豊かにする術をたくさん手に入れていると思う。恋愛もその中に含まれると思う。19歳から、遠くの地に来られて本当にラッキーだなって思う。