新卒女雑記録

22時ちょうど 東京発

最期まで

GW で2019年夏以来、祖父母の家へ行った。

前回はおじいちゃんの要望で、祖父母をいきなりステーキに連れて行った回でした。おじいちゃんは、あの後2回行ったわと笑って迎えてくれました。

 

もう80も後半のおじいちゃんと、80過ぎたばかりのおばあちゃん。私はおじいちゃん大好きなんで、大体ひっついてまわったりするんやけど、今回もおじいちゃんの車にのってスーパーまで買い物について行った。この4年の間に変わったことといえば、私が運転免許をとったこと。それによっておじいちゃんの運転具合を判定する能力をえた。ぶつけたくないのか、めちゃめちゃに真ん中によるし、話してると曲がらないといけないところは通り過ぎるし、スピード出しすぎることはないけれど、車庫入れも手間取ったりと衰えを感じざるを得ない。本人も言ってましたが。でも免許センターの認知テストは85点だったらしい(満点が100点なのか知らないけど)

 

おじいちゃんはミーハーなので、趣味の1眼レフのデジタルのカメラを買ってみたり、ドローンを買ってみたり、電球をLEDに変えてみたかったりと忙しい。大体は使いこなせていないんだけど。

私はいつもそれをおじいちゃんに教えてあげる役なので、今回もドローンを飛ばしてみせたり。カメラのレンズのアダプターをネットで取り寄せてあげたり、と、忙しい。

カメラで撮った写真を、パソコンで見れるよと教えてあげて見ていると、最後に撮った写真が4年前のもので、コロナ禍にしっかり家で待機してたんだなと、人生の細道を家で過ごさねばならなかったことに勝手に切なくなったり。

とはいうものの、おじいちゃんはかなり家でも道楽をするタイプ。広い庭には石を敷いて、松なんかも植えて剪定もして、池の鯉にえさをやり、カナリアに餌をやり、盆栽に水をやり、植木に水をやり。おじいちゃんのおじいちゃんの代からあるという白い藤の花が見事に咲いていた。

 

80過ぎてから終活だと言い言い、畑もやめて、ゴルフもしなくなったおじいちゃん。応接の、電球をみんなLEDに変えてくれと言うので、変えてあげた。そのあと2人で柔らかいソファに座って、おじいちゃんが、ステレオで曲かけたるわと、大きなスピーカーからクラシックをかけ、暖かい日はなおじいさんはここでクラシック聴くんやわ。とこの部屋は壁の板が特別やから模様が綺麗やろ、と話しているのを聞きながら、私は、おじいちゃんにはこの部屋で、好きなクラシックを聴きながらうとうとして、眠るように亡くなってほしい、と心の底から思った。最期には絶対、ゴルフのトロフィーや、親しい人からもらったお土産の置き物や、昔に釣って新聞に載ったと言う大きな鯛の魚拓、おじいちゃんのいとこが買って聴きにきていたというレコード、窓から見える手入れされた庭、いいものだけに囲まれて、逝ってほしいとか思ってしまった。

 

おじいちゃんの手にあまりに肉がなかったのが怖かって、手を触って確かめたけど、昔子供の時に握った、流動食しか食べられなくなっていたひいおばあちゃんの薄い、ツルツルした、骨ばかりの手とは違って、力も、柔らかさも感じられたことが、私を安心させた。

 

自分の家に帰ってきて、私の家には何にもないなと思った。おじいちゃんから電話がかかってきて、パソコンの電源の付け方わからないから、今度来たとき教えてごせと言われた時、泣きそうになった。