新卒女雑記録

22時ちょうど 東京発

思い出すことにします。

友達に手紙で、私の死んでしまった大切な人(M)の話をしたところ、思い出してあげるのがいいと言われたので、一生懸命に思い出して書きます。前にはぼんやりとしかかきたくなかったことも、今はっきりと書けると思ったから。

 

早めの夏、当時の彼氏の家からJRと京王線を乗り継いで1時間のところに住んでいたMのところまで、お願いだから来てといわれていった私。だいたいいつもスーパーか駅前で何かしらを食べて家に行くという流れだったけど、その日は会うなりいつもありがとうと綺麗な袋に入ったボールペンを渡されて、その場で崩れて泣き出したM。泣いてるMを引っ張って、スーパーで何か食べられそうか?と聞きながら買い物をしたけど、何も食べられない、という。何なら食べられる?と聞くと金パブというM。帰り道のドラストで金パブを2瓶買ってあげた(嬉しいことに私がいる間、MがそれをODすることはなかった)。

家に着くと、壁に血の跡、風呂場に血の跡、変なお香の匂い、注射器、十字架、、、明らかに今までのMの暮らしとは異なる成分が入ってきていて。そのそれぞれについていちいち彼女が〜した跡だ、とか彼女が持ってきたとか説明する。そして、彼女が怖いと泣き始める。彼女が拘置所から送ってきた手紙をファイリングしていて、それを私に読ませる。日本語が達者なんだ。彼女はずるい、と泣く。自分の気持ちが彼女から離れつつあることを感じると、自分が悪かった愛している、というような旨の手紙を送ってよこす。それを読んで、私(Mの一人称は私)はまたこの子を見捨てられないと思ってしまう、と言う。目の前にいる時は私のことを責めるのに、助けて欲しい時には助けを求めてくるし、私が本当に折れそうな時だけ優しいことをしてくる。そういう能力だけに長けている。嗅覚が鋭い。利用されていることもわかっているけど、私が助けてあげないとと思う。と話す。

客観的に見て、その彼女は精神病だし、明らかにもう助けられないほどおかしいし、Mがおかしくなったのもその女のせいだとわかるんだけど、わかるんだけど、私にもMの気持ちがわかるし、Mは彼女を正しくしたかった。そして、私もその時の彼氏を正しくしたくて必死な時期だった(今の夫)。だから尚更気持ちがわかってしまった。だからその話をした。

Mは続けた。学がないなりに上手くきてきたやつって、人に嘘をついたり、優しくしたりするのが異常に上手いんだよ。そういうセンスだけでここまで無事で生きてきてるんだから。と。その通りだと思う。正しいことだけで暮らしていけない人たちだったのだ。

さらに続ける。彼女と出会う前に戻りたい、戻れないなら、お姉ちゃん(その時Mは精神おかしくなり過ぎて自分のが年上なのに私のことをそう呼んでいた)と一緒に北海道で暮らしたい。二人で暮らしたい、、、でもお姉ちゃんを不幸にしたくないから、お姉ちゃんは彼氏と幸せになってね。。。

5分後、お姉ちゃんは彼氏の方が大事なんだよね。泣き始める。

その5分後、ごめんわかってる、私が今頭がおかしくなっている、お姉ちゃんは彼氏と幸せになることと私を大切に思うことは関係ない、私のことをこんなに大切にしてくれるのに困らせてごめん、嫌いにならないで。。。。

こんな感じで、夜になる。今日は帰らないでお願いします。一人になることが耐えられない。あと二週間、彼女は拘置所から出てこられない、お願い。

Mはもう座っていることもままならないような状況で(多分離脱症状?)、布団に横になる。手をつないでいた。あまりにずっと泣くので、頭をなでていた。

一瞬頭がスッキリするタイミングがあって、前の自信過剰な感じでMが話す。彼女が拘置所から出てきたら、二人で生活する。そうしたら、彼女は私が人と会うことを嫌がるので、お姉ちゃんにもしばらくかずっとあえない。多分引っ越すし、大学も辞める。私は彼女に殺されるかもしれないし、自分で死んでしまうかもしれない。でもそれでもお姉ちゃんが今日来てくれて、頭を撫でてくれたことを一生幸せな記憶として持っておく。今日を思い出すことができればいいと思える。忘れない。

さらに何時かの正気に戻った時に、実家には頼れない、父は世間体が命で、母親も明らかに精神病なのに入院させてもらえない。私も遠くの病院に通わされていた。大学院の中退も許されない、今の状況から助けてもらうにはどこかの病院に入院させてもらうしかないけど、それは期待できな。そして、もし本当に私に何かあったら実家に電話して。と電話番号を私に教えた。

朝になって帰る時、また明日来て、という。ごめん、明日は無理やから来週の土曜にまた来るねと私は言った。

 

けど行かなかった。彼氏に行くねと言ってなんで男の家に泊まるんだと言われて、説明したけど、それ以上揉めるのが嫌で、行かなかった。

次に私が行く日までに、彼女が出てきて、Mは彼女に会うために神戸に行った。その時に、私に2万円借りた。お金を貸してと言われた時、ああ、Mはもう私に二度と会うつもりはないんだなと理解した。案の定、お金を振り込んだあと「お金は向こうについたらバイトして返します。ありがとう、彼氏と幸せになって。私は諦めて。彼女が心配するから、極力連絡はしないで。」と連絡が来た。

 

その1週間後、元気にしているかなとダメもとでワンギリしてみたら、折り返しのメッセージが来た。どうしたの?と、お前が連絡するなって言ったのに普通に返事するんかい、と思いながら、いや用事はないよ、元気かと思っただけ。また今度でいい。と返した。

 

その1週間後、彼女の方のtwitterで、M氏が自殺しました。私が3日気を失っていた間に、隣の空き部屋で首を吊ったそうです。遺体はご両親が引き取られて私は見ていません。と書かれていた。私はそのつぶやきを、大学の友達とジムに行った帰りに行った神保町近くのオムライス屋さんで見た。一言断って、彼氏に電話で伝えた。彼氏は大変じゃん、葬式とか行かないと、、と言ったのに対して、変に冷静に自殺だから葬式は出さないでしょ。とか答えた記憶がある。

 

これが2019年6月までのことの顛末で、良かった悪かった、ああしていればとかは思わない。ただ、今会えないことが寂しいだけ。2年前くらい前まであんまりちゃんと思い出せなかったのに、近頃また鮮明に当時のことを思い出せるようになったのはなんでなんだろうとは、たまに思う。

 

いつかボケて思い出せなくなった時のために書きました。